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 お盆休みも終わりましたね。
 お盆といえば、亡き人を偲ぶ季節。
 
 実は今年の春、高校時代の親友Tが亡くなりました。
 たまたま買い物に行ったコンビニでくも膜下出血で倒れたそうで、家族も死に目に会えないほどの急な最期でした。弟さんが残っていた携帯の発信記録から私にも連絡を下さったのですが、あいにく仕事が忙しい時期だったので葬儀に参列することもできませんでした。
 Tは人情に厚く、頭も切れ、行動力もあるヤツで、高校時代の数少ない友人の一人でした。
 学生時代から広告関係の仕事をして、その方面ではかなりの有力者との人脈もあったようなのですが、いかんせん、半端じゃない酒癖の悪さが祟り、ここ数年は八方塞りの状態が続いていました。土日の昼間に携帯に電話がかかってくることが多く(つまり、こっちはこれから仕事なのですが)、呂律も回らないほど酔っ払って「今度は必ず儲かる仕事だ」と一生懸命仕事の内容を説明してくれようとするのですが、なんでスポンサーでもない私にそれを聞かせたいのかも分からず、こちらもこれから仕事ということで気が張っていることも手伝って「お前のその手の話は聞き飽きた。だいたいお前はその酒癖を直さなければまたしくじるぞ」などと、今さら本人にもどうしようないことだとわかっていながら厳しい言葉をぶつけたりしていました。それでも月に1度位は、向こうから電話をかけてきて相変わらず同じような決意発表をして、最後に必ず「松山に行きたいなあ。今度儲かったら必ず松山に行くから案内してくれ。奥さんにも紹介してくれ」と決まりのように言って、電話を切るのでした。
 
 ここ最近、私はTの電話を受けるのが辛くなっていました。若いときは、あんなに思ったままに行動し、周りからも評価され、誇りを持ち輝いていたTが、うらぶれていくというか、色褪せていくというか、何よりTが自信と誇りを失っていくように見えるのが堪らなく辛かったのです。そんな中で届いた訃報でしたので、確かに若すぎる死かもしれないが曲がりなりにも自然なお迎えが来たと言うのは悲しいこととばかりも言えないかもしれない。Tがこのまま不本意な生き方を続けることから解放されるというのは彼のためにはかえってよかったのかもしれない、などと思っておりました。

 そんな中で迎えたTの初盆の夜。妻は里帰りして自宅に一人になった私は、夜半にふと、あることに気づきました。

 Tがこの世からいなくなったということは、高校時代の私の記憶の多くの部分は日の目を見ることがなくなるんだなあ…
 つまり、
「でよ、俺がそん時あのババァにこう言われてさあ」「そうそう」とか、
「あいつがあんましエラそうなもんだから俺もカチンときてこう言ってやったわけよ」「へぇ」などという会話も、もうする機会がないということなのか…

 ということは、俺の高校時代の思い出のかなり多くの部分は今すぐ「消去」ボタンを押して消してしまってもまったく支障はない………なるほど………

 なんというか愕然というか、呆然と言うか。
 いや確かに、Tの死を聞いた直後にそれに気付かなかった自分の馬鹿さ加減にも愕然としましたが、それよりも記憶が自分の意思と無関係に封印されようとしているという事実そのものに驚いたのです。なるほど、お年を召した方が友人を亡くすとこたえるとおっしゃるのはこれか、とおぼろげに思いました。
 友をなくすということは、その友と過ごした自分の思い出もなくすということなんですね。

 エアコンの効いたひんやりした室内で、迫りくる寂寥というか、寂寞というか、なんとも物淋しい思いにしばし圧倒されるようでした。

 ただ、ただまぁ、そうはいっても「この世では」というだけで、私も未来永劫生きるわけでもなし、「あの世で」一杯やりながら話す機会もあるだろう(何を一杯やるのか知らないが。甘茶かな)。うん、うん、きっとそうにちがいない。
 とすれば、それまでTよ。そちらでのんびり待っていてくれ。

 あ、ついでに言っておくけど、遅いからとか言って途中で会いに来てくれたりしないでもいいからね。別にお化けが怖いとかそういうのではなく、なんというか、うーん、つまり、そうそう、俺は急かされるのが嫌いだから、ホラ、お前も知ってのとおり、ね。会いに来たらその場で絶交だからそこはよろしくね。生きてるとか死んでるとかそういう言い訳は聞かないから。心配しないでも近いうちに(…近いうちもマズイか、ホントに近いうちになると困るし、こないだ総理も使ってたし)、遠くない将来にそちらにうかがうからね。それまでご機嫌よろしゅう、ごきげんよう、アディオス!

 と、亡き友へのご挨拶も終わったところで本日はこれまで。
 ご退屈様でした。

 まだまだ残暑が続くようですが皆様お体ご自愛下さいませ。

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