スタッフブログ

 四国地方の梅雨明けはエルニーニョ現象の影響で平年より遅れ、ウェザーニューズによれば7月23日だとか。
 松山は相変わらず、すっきりしない空模様ですが、皆様いかがお過ごしですか。
 いよいよ各中学・高校、夏休み期間に突入しました。
 私は、昼間から新規のお客様のご案内にてんてこ舞いしながら、授業の予習、塾生の皆様との語らいと、濃密な時間を過ごしております。

 と時候のご挨拶など申し上げたところで前回の続きを。

 天下統一後に信長が構想していた国家統治のシステムは「封建制」だったのか、「中央集権制」だったのか。
 蛇足ながら申し上げると、「封建制」とは家来が与えられた領土を子々孫々まで受け継ぎながら君主に忠誠を尽くすというシステムで、江戸時代の将軍と大名の関係です。この場合、各地方は「家来」がオーナーであり、将軍といえどもその地方の行政に口を出すことは慎まなければいけません。
 一方、「中央集権制」とは中央に一人の君主が君臨し、家来を各地方に派遣して一国まるごとを一人の君主が支配するシステム。具体的にいえば、一人の皇帝が科挙で選ばれた官僚集団を全土に送って国を支配した中国のシステム。この場合、家来に与えられるのはサラリーと勲章だけで、土地はからみません。国家の土地はあまねく君主のもの。よって、家来が君主に逆らう場合も居城に籠って反旗を翻すわけにはいきません。せいぜい安禄山のように派遣された地方の長としての地位を利用し、クーデターを起こすくらいが関の山。また、家来の息子がその父ほど賢くなかった場合、基本的にはクビというかサラリーを払わなければ終わりです。君主は常に試験に首席で受かった優秀な官僚を使い続けることができるわけで、君主にとっては有難いシステムです。
封建制

 ただし、君主に圧倒的に有利な「中央集権制」を採用するには条件があります。それは君主が政権奪取・掌握時に臣下と比較して絶対的強者であること。いわば「完全試合」を達成しなければなりません。相対的強者ではダメです。なぜなら、いったん中央集権制における君主と臣下の地位を受け入れれば、臣下はいつでも首のすげ替えが可能な駒に転落するわけで未来永劫反抗の芽が摘み取られてしまいます。もし将来、君主が心変わりして自分が追われる地位になればおとなしく毒を飲んで死ぬくらいしかできません。これを可能にするためには家来が「殺されないだけ幸せ」と思うくらいの圧倒的な力の差が必要なわけです。
 日本史においては、この権力奪取・掌握時の絶対的強者というのはほとんどいません。

 後白河法皇との死闘の中で権力を掌握し、劣勢のまま死去した平清盛。
 裸一貫から妻の実家北条氏の軍事力によって天下を取り、終生北条氏に頭が上がらなかった源頼朝。
 南北朝の混乱の中で天下を取り、終止符も打てず亡くなった足利尊氏。
 徳川家康との危うい力の均衡の上で政治的能力により権力を奪取維持した豊臣秀吉。
 そして、自らの死の直前にようやく前主豊臣秀吉の遺児を滅ぼすことができたに過ぎない徳川家康。
源頼朝

 幕府を開いたか否かを問わず、ざっと天下人と呼ばれる人を挙げてみました。
 皆さん、接戦を制し「天下人」の称号を手にした人ばかりで絶対的強者には程遠い人ばかりです。

 そんな中、史上唯一完全試合に王手をかけたのが織田信長でした。
 もともと織田信長率いる織田軍団の軍団長の皆さんは、信長が無名の新人を抜擢して自らの兵を預けていただけであり、信長に逆らえるだけの独自の力の基盤がありませんでした。柴田勝家、羽柴秀吉、明智光秀、滝川一益、丹羽長秀の軍団長の内、出自が明らかな人はほとんどおらず、いわゆる家柄とは全く関係なく徹底的な能力主義で登用された人たちです。
 しかも信長はいわゆる軍師的な存在をもたず、軍略政略いずれにおいても自分が考えた方針を家臣たちに実行させていました。信長にとって家臣たちは、黙って言うことを聞く単なる手足に過ぎませんでした。一方、家臣たちにとっての信長は、自らのアイデンティティーの基盤であり、自分には思いつけない知恵の泉。さらに自分が信長の命令実行に失敗すれば代わりはいくらでもいるという、「神」に近い存在だったと思われます。

 そんな信長が天下掌握後に行おうと思ったのは、「中央集権制」に違いないと鈴木眞哉氏は仰っていますが、私もそう思います。信長からすれば、無能な家臣たちと日本という土地を山分けしなければならない理由が分からないというところでしょう。

 事実、その前触れとなる事件が本能寺の変の2年前に起こりました。佐久間信盛親子、林秀貞らの追放です。
 この話もう少しだけ続きます。

 とりあえず本日はこれまで。
 ご退屈様でした。
 次は梅雨明けかな。

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