毎日暑い日が続きますね。
ひと昔前なら、風鈴にスイカ、蚊取り線香とTVの怪談、と夏の風物詩は大体決まっていたものですが、最近まったくやりませんよね、怪談。
やっぱりオウム事件あたりからTVの風向きが変わってきたのかなあ。
よし、TVが韓流ばかりで、怪談をやらないのなら私が。
というわけで、本日は私の数少ない超常体験など。
19の夏、私は予備校に通うために東京にいた。
もっとも、まともに通ったのは最初の3日くらいで、あとはひたすら初めての東京暮らしを満喫する日々を送っていた。
住んでいたのは多摩市のアパート。鉄筋コンクリート新築・エアコン完備・ワンルーム・3階建の3階。アパートの住民も同年代の人たちばかりで仲が良く、飲み会をやったり、麻雀をやったりと、高校3年間を寮で過ごした私は久しぶりの人間らしい生活のおかげで「何のために東京にいるのか」など杜子春並みにすっかり忘れた日々を送っていた。
そんなある日。
アパートの両隣の住人が帰省するからしばらく遊べないと言う。真下と斜め下の住人はその少し前から帰省していて留守だった。1階の麻雀メンバーの同級生もすでに帰省していた。
私はというと、浪人生だから帰省しないといえば聞こえはいいが、実家に帰って小言を聞かされるより特別手当が出るこの時期にバイトをしない手はないということで、一人東京に残り24時間営業のドーナツショップでアルバイトに明け暮れていた。当然、昼よりも時給のいい夜のシフトを選んだ私は、ゴキブリなみに昼夜が逆転した生活だった。
ある夜、午前2時くらいだったか。久しぶりの休みにアパートで本を読んでいた私は、階上から大きな物音が続いているのが気になり始めた。
何か引越しをしているような割と大きな音だった。
「こんな夜中に引越し?」
それもおかしな話だが、私が住んでいるのは3階建の3階。上に部屋はない。
ということは、隣の音を上からと聞き間違えているのか。
しかし、両隣は留守である。
もしかして、下の部屋の音を…
下の部屋も不在である。だいいち、私の住んでいたアパートは鉄筋コンクリート造なので周囲の物音はそれまであまり聞こえたことがなかった。
もっとも、そうは言ってもこのアパートのどこかで大きな音がした(音はしばらく続いてやんだ)のは間違いない。
そしてそれは、両隣でも、上でも、真下でも、斜め下でもない。
じゃあ、どの部屋からの音だったのか。少し興味が湧いてきた。
よし、外に出てどの部屋に明かりが灯いているのか確かめてみよう。
こうして私は、部屋を出てアパート全体が見渡せる目の前の広場に立った。
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